平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の際に、K-NETおよびKiK-netの地表観測点で観測された観測記録を用いて、長戸・川瀬建物群モデルによりその建物破壊性能を調べました。平成23年3月18日に公開された強震データのうち、水平成分のいずれかがおおよそ200Galを超える観測記録について解析を行いました。
[ご注意]
本被害予測は構造物群の非線形応答解析に基づくもので、その詳細は長戸・川瀬(2001, 2002a, 2002b)1)2)3)にあります。本手法は兵庫県南部地震の被害統計に基づいたもので、兵庫県南部地震の構造物被害率が再現できるように構造物の特性がチューニングされていますが、表層地盤を考慮していないため地震動のスペクトル特性によっては被害率が高めに出る傾向がありますのでご注意ください。またここで表示している予測被害率は大破・倒壊率であり、通常の自治体が判定する全壊率やそれに基づいて他の論文で用いられている被害率(たとえば全壊+0.5*半壊率など)よりは小さい値となっていますのでご注意ください。解析地点はK-NETおよびKiK-netの本震記録が3月18日の段階で回収されていた273(K-NET)+112(KiK-net)地点のうち200Gal以上を示した102地点です。その時点で回収できていない地点で高い被害率となっている地点があることが十分考えられます。また解析に用いた観測地点がその周辺地域の強震動レベルを代表したものであるとは限らず、当該市町村ではより大きな被害率(あるいは小さな被害率)となっている可能性もあります。これらの点に十分配慮いただいた上で、広域での被害調査計画立案の参考にしていただければ幸いです。
2011.03.21
都市空間安全制御研究分野 宝音図・松島信一・川瀬 博
2012.02.08追記
観測点を増やしました。印刷用ファイルはまだありません。
2011.03.23追記
被害率の詳細についてはこちらをご覧下さい。
2011.03.28追記
印刷用資料はこちらからダウンロード出来ます。
解析対象となった観測点位置(図中色つき○)とそれらの観測点の最大加速度分布と最大速度分布を示します。
S造
新旧耐震基準に基づく、3,4,5階建ての予測被害率を示します。
RC造
新旧耐震基準に基づく、3,6,9階建て、および新旧を区別しない12階建ての予測被害率を示します。
解析に用いた強震記録は防災科学技術研究所の強震観測網サイト4)よりダウンロードさせていただきました。図の作成にはGMT5)を用いました。記して感謝の意を表します。
1)長戸健一郎・川瀬博:建物被害データと再現強震動によるRC造構造物群の被害予測モデル, 日本建築学会構造系論文集, 544, 31-37, 2001.6.
2)長戸健一郎・川瀬博:鉄骨造建物群の被害予測モデルの構築, 日本建築学会構造系論文集, 559, 101-106, 2002.9.
3)長戸健一郎・川瀬博:観測被害統計と非線形応答解析に基づく木造建物被害予測モデルの構築と観測強震動への適用, 第11回日本地震工学シンポジウム, 2002.11.
4)防災科学技術研究所 強震観測網(K-NET、KiK-net).
5)Wessel, P. and W.H.F. Smith:New, improved version of Generic Mapping Tools released, EOS Transaction of AGU 79(47), pp.579, 1998.